『蠅の王』小説版 漂流物の名作【感想】

『蠅の王』を読み終えました。ハヤカワepi文庫から出版された黒原 敏行翻訳のものです。
原作はウィリアム・ゴールディング。ノーベル文学賞受賞者の作家だそうです。

原作者はオックスフォード大学を卒業するも、第2次世界大戦に参戦。
なんとあのノルマンディー上陸作戦の生き残りだそうです。

そんな彼が戦争中に培ったと思われる残虐性を遺憾なく示したのが今作。
さっそく、感想を綴っていきたいと思います。

あらすじ(ネタバレ)

未来の大戦中、疎開地へ向かう飛行機が墜落し、乗員である少年たちは南太平洋の無人島に置き去りにされる。彼らはラルフとピギーの2人を中心に規則を作り、烽火をあげ続けることで救援を待とうとする。

最初こそ協力し合っていた少年たちであったが、元々ラルフと仲の悪かった少年ジャックは、ラルフが中心であることを気に入らず、また食べ物などにも不自由しない島で自由に生きることを望んで、独自に狩猟隊を結成する。ジャックは狩猟隊のメンバーと共に毎日を好き勝手に漫遊し、豚を狩ることで上等なご馳走を得るようになり、やがてはラルフの一派の少年たちもその魅力に引かれ始める。

そんな中、船が島の沖を通りかかったにもかかわらず、その日の当番が烽火を怠ったのが原因で、少年たちの存在に気付かないまま船は過ぎ去ってしまう。それが原因で、ラルフの一派では対立が巻き起こる。その隙を突くように、ジャックはラルフの仲間たちを引き込んでいくまでのカリスマ性まで発揮していく。狩猟隊の少年たちは次第に、内面の獣性が目覚めていき、泥絵の具を顔に塗りたくった蛮族のような姿となって、ついには仲間の一人であったサイモンを集団で手にかけるまでに至る。

仲間のほとんどをジャックに奪われたラルフは、唯一自分の味方でいてくれたピギーも、ジャックの取り巻きであるロジャーに岩を頭上に落とされて殺され、完全に孤立する。その翌日、ジャックは自らが王でいられる楽園を脅かしうる、一番目障りな存在であったラルフを排除すべく、狩猟隊に木の枝を槍のように尖らせて、ラルフを殺害するよう指示する。ラルフは孤立してしまった恐怖や悲しみに苦しみながらも、森に火を放ったジャックたち狩猟隊から、島中を逃げ回ることになる。

(wikipedeiaより引用)

感想

この小説は、無垢な子供たちだけで無人島生活をさせたらどうなるのかという想像に挑んだ小説で非常に面白いものでした。
というのも本来持っている人間の残虐性と脆さがこれでもかというくらい表現されており、その行動が何度も心を揺さぶるからです。

特にジャックの容赦のなさには驚かされました。リーダーとして選ばれなかったものの、ラルフとうまくやっていたのに中盤からの殺意が凄まじかったです。
それに追随していく子供たちもまた恐ろしい。肉と遊びの欲求が抑えられず、蛮族と化す子供たち。最初は豚を殺すことすら躊躇していたのに、ジャックと子供たちが死刑執行人にまでなってしまいますからね。

 

ではラルフの側に不手際はあったのかということを考えてみます。
ジャックへの当たりが強かったことくらいでしょうか?

でも強気に出ないと、絶対増長してきますから難しいところですね。
もしこれが大人だけだったら、どうなっていたのでしょうか。

自分は煙を絶やさず燃やし続けて、狩りをほどほどにしたと思います。
しかしラルフとジャックのような決裂は起こるのかなと推測します。

これが食べ物にあふれてなかったら話は違かったのかもしれません。
というのも実際の日本の事件で物資のほとんどない無人島で3カ月以上生活をした例があります。

 

悪魔のような一面が描かれた小説でしたが考えられるところがあり、エンターテインメント性が高い、すばらしい小説でした。
訳の出来もよく、翻訳ものにありがちなくどい言い回しが感じられず、サクサク読み進めることができました。
海外の名作はたまに読むとおもしろいですね。